B.B.CLOVERS コラム【甲子園の教訓】 ~New Edition~
No.10 「甲子園の教訓」

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前回のコラムNo.9では、甲子園で僕が味わった苦い思い出についてお伝え致しました。
このコラムもいよいよ最終回。
No.10では、甲子園が僕に教えてくれたことをご紹介してまいります。

【写真:僕が実際に甲子園で着けた背番号「10」】

甲子園から帰った僕を待ち受けていた様々な出来事、それは18歳の傷ついた心にまさしく塩を塗りつけられる様な大変な苦痛を伴うものでした。

僕は夏休みが終わる頃、大好きだったはずの野球に一切触れたくない自分に気づき、「野球を辞めよう…」と決断したのです。

夢にまで見た甲子園で、僕が経験したのは「恐怖」。

なぜ、大好きな野球で、憧れの甲子園で「恐怖」を感じなくてはいけないのか、僕は心の整理をつけることが全く出来ずにいました。

そんな僕は大好きな野球に裏切られてしまった気がして、大学へ進学したら別のスポーツに新たに挑戦しようと思い始めていました…。

そして、季節は流れて秋。

野球はポストシーズンを迎え、プロアマ共に、非常に熱い戦いを繰り広げていました。

そんな時に、僕の心を揺さぶる出来事がありました。

それは「東京六大学野球・早慶戦」でした。

当時は早慶それぞれに桐蔭の先輩が所属していて、とても活躍されていました。

僕はまだ野球を観たくない自分と、先輩方が活躍する大学野球に触れてみたい自分とを天秤にかけ、後者を選択し、神宮球場へと足を運んだのでした。

そこには、僕の想像をはるかに上回る観客数、そして母校への応援を凄まじい迫力で繰り広げる学生たちの姿がありました。

そして、神宮の杜で躍動する先輩たち…。

僕はその空間にすぐに引き込まれました。

と同時に、僕の中に潜んでいた野球に対する情熱が、また少しずつ沸き立つのを感じて、試合の一挙手一投足を食い入るように見つめていました。

「俺、やっぱり野球が好きだな…」

白熱の早慶戦が終わり、素晴らしい活躍をした先輩方への挨拶を終えて神宮球場を後にする頃には、僕の心にはそんな気持ちが芽生え始めていました。

それからの僕は、大学野球を経て、社会人野球に進み、31歳まで13年間現役としてプレーを続けました。

そして、その後は指導者としてユニフォームに袖を通しています。

そんな僕の野球人生ですが、やはりその中心にはこの甲子園での経験を通して得た教訓がありました。

「甲子園が教えてくれたこと」

~① リスペクト~

今コラムでもご紹介した、横浜高校との壮絶な県大会決勝戦、そして沖縄尚学高との甲子園開幕戦での激闘。

この熱い戦いの命運を分けたのは、コラムNo.4でご紹介した「リスペクト」の差ではないでしょうか。

どんな相手にでも忘れてはいけないのが「リスペクト」。
これを甲子園に教えてもらった気がします。

~② 甲子園の魔物~

想像していないような出来事が突然起こることから、「甲子園には魔物が潜む」とよく言われるのをご存知の方も多いかと思います。

でも、僕は自身の甲子園での経験を通して、魔物が潜む場所は「選手自身の心」であると感じました。

前述の①とも共通しますが、試合への準備などを通して、いかに自分の気持ちをフラットに整えることが出来るか。

大舞台であるからこその難しさを教えてもらった気がします。

~③ 何回でも!~

僕はこのコラムでご紹介したように、18歳の少年としては少々厳しすぎる経験をしたのかもしれません。

でも、もう一度立ち上がって、野球というスポーツと向き合って自分の人生をリセットしました。

そして、その野球を通して、今日まで僕にとってかけがえのない、たくさんの方々と出会うことが出来ました。

このコラムの冒頭にも書きましたが、僕がもし野球に背を向けて他のスポーツをしていたら…。

僕にはきっと今のような人生は訪れなかったでしょう。

その時は苦しすぎる経験でも、それをたとえ時間をかけても、次のステップへのチャンスと捉えることが出来れば、何回でも自分の人生を違った形で切り開いていける。

そんなことを教えてもらった気がします。

もっともっと教えてもらったことがありますが、おおよそこの3点に集約されているのではないかと感じています。

また、この3点はよく世間一般で言われる類のことではありますが、改めて「自身の経験を通して得た教訓」だからこそ、何ものにも変え難い価値があると思っているのです。

さて、今回写真を掲載した、僕が甲子園で着けていた背番号「10」。

実は、「あの日」から洗濯をしないまま保存してあります。

番号の左上には、それを物語る甲子園の土の汚れがそのまま残っています。

僕は辛いことや、嫌なことがあると、この背番号を見ることにしています。

そして、その時の経験を通して得た教訓を思い返して、気持ちをリセットしています。

きっと、皆さんにも僕と同じように「心に寄り添うもの」が必ずあると思います。

それを是非大事にしてください。

そして、気持ちをリセットして、フラットな状態で次に向かってみてください。

みなさんの先にある、これからみなさんを待っているのは「未来」だけです。

もちろん、時として「過去」を振り返ることも大事でしょう。

でも、「未来」をどう生きるかが人生においては最も大事なのではないでしょうか。

このコラムを読んで、ご自分の次の夢や目標に向かっていく気持ちが少しでも明るくなった、そんな気持ちになって頂けていたなら僕はそれ以上に嬉しいことはありません。

最初は2~3回で終了しようと思っていた、このコラム【甲子園の教訓】シリーズ。

書き始めている内に、最後は僕の甲子園で着けた背番号「10」で終わりたいと思い、ここまで様々なことを書き綴ってきました。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

本当に色々な方々からの反響に驚いたと同時に、それを書く活力へと変えさせていただきました。

この場をお借りして深く御礼申し上げます。

さて、そんなB.B.CLOVERSコラム【甲子園の教訓】も今回で最終回を迎えますが、既に「次はいつか、何か!?」などの嬉しいコメントも頂戴しております。

次回のコラムテーマはまだ絞り込んでいませんが、決まりましたらまたお届けいたしますので、是非楽しみにお待ち頂けましたら幸いです。

B.B.CLOVERS
萩島 賢